02 / 導入シナリオ

保険金請求の査定を稟議一枚で決める

GembaOS は、AI エージェントを職務権限規程・稟議・監査のもとで運用するための実行基盤です。ポリシーによる権限判定、パラメータに紐づくワンタイム許可証、人の承認記録を、オンプレミスまたはプライベート VPC 上で提供します。このシナリオは保険金請求の査定です。書類を読むのはモデル、読んだ値を記録と照合するのは GembaOS なので、少額で問題のない請求は数分で片づきます。何週間もかけて書類を集め、査定担当・医療審査・法務を経る案件でも、最後に保険金部長の前に出るのは一画面で判断できる稟議書一枚です。

保険金請求でモデルは何をし、何をしないのか?

保険金の Playbook は調査担当を宣言します。請求と保険契約を読む権限と、型の決まった書式ひとつだけを持つモデルです。申告、すべての添付、回答済みの補正を読み、署名する人に要旨を渡します。

調査担当がすること調査担当ができないこと
領収書・請求書・診断書から金額と日付を読む金額の提案。準備金は記録上の請求額
事実と推定を分けて、経緯と要旨を書く所見の選択。担保範囲内などを選ぶのは押印する人
一覧の種類で論点を挙げる(金額の相違、既往症、免責の可能性など)。約款の条項を引用し、条文の語句をそのまま写す契約にない条項の引用や、条文にない言い換え。GembaOS が「契約に記載なし」と示し、引用は条文と一字ずつ照合する
ファイルを書類の種類(診療記録、領収書、請求書、写真)に分ける書類がそろったと判断すること。必要書類の数は GembaOS が案件の実ファイルと照らして数える
不足書類と相談先を挙げる申請者への連絡、押印、経路を厳しくする以外の変更

GembaOS は、人が読む前に要旨を確かめます。請求記録に対応する項目がある値はすべて照合し、一致か相違を付けます。相違・論点、あるいは要旨がない(モデルが止まっている)ことはリスクフラグになり、フラグは経路に人を加える方向にしか働きません。押印する人は全ページではなく、相違の一行を読みます。

条文が本当にそう書いてあるか、どう分かるのか

条文がその場にあり、引用が条文と照合されるからです。

条項を引く論点には、その条文の語句をそのまま添えることを求めます。調査担当は約款の条文を自分の読取りで読み、根拠とする一文を要旨に写します。GembaOS はモデルが言葉で通り抜けられない二点を機械的に見ます。条項番号が保険契約記録の条項にあるか、そして引用文がその条項の本文にあるか(空白と大小文字を除いて一字ずつ)。用紙には次のいずれかが出ます。

用紙の表示意味
この語句は条文にある引用は、挙げられた条項の本文にある
この語句は条文にない条文は読んだが、そうは書いていない(言い換え、もしくはそれ以上)
引用なし条文による裏づけがない
契約に記載なし保険契約記録にその条項が無い

最初の一つ以外はリスク標識です。優先処理は閉じ、人が見ます。

ここで証明できるのは狭い範囲だと、はっきり書きます。証明できるのは「語句が条文のものであること」までです。その条項が論点を支えるかどうかは判断であり、押印する人のものです。だからこそ、引用の横に条文の全文を置き、引用した一文に印を付けます。読む人は、探しにいくのではなく、目を落とすだけで条文に行き当たります。

少額の請求はどうなるのか?

少額の請求は即時処理の対象になります。申請者が作業票ページで申告を確認し、請求が Playbook の自動決裁の範囲とテナントの職務権限表の範囲の両方に収まり、書類が一つ以上あって、要旨を含めて何も指摘がない。このときは規程のルールが決裁し、ワンタイム許可証のもとで準備金を計上して読み戻します。申請者には数秒で回答が届きます。上限はどちらも御社が決めます。自動決裁の範囲を外せば、すべての請求が査定担当に回ります。

少額でも指摘があれば査定担当に回ります。下のデモでは、診療所の領収書の合計が ¥18,000、請求は ¥12,000 です。その行に「相違」が付いて即時処理にはならず、査定担当が領収書をワンクリックで開いて判断します。

不足書類は誰が督促するのか?

GembaOS は案件を稟議書ではなく作業票の上に置きます。請求の区分ごとに必要な書類は Playbook が定めます。傷害なら診療記録と領収書、家財なら修理の請求書。調査担当はファイルを一つずつ書類の種類に分け、GembaOS が各ファイルを案件に実際にあるファイルと照らして、足りないものを数えます。数えるのは GembaOS です。種類は案件に実在するファイルを指すときだけ数え、どのファイルを何に分類したかは押印する人に見えます。

必要書類は GembaOS が自ら補正依頼を出します。種類と提出期限、期限の 3 営業日前に一度の督促。申請者に伝わるのは種類だけで、モデルの文章は届きません。申請者は作業票ページからファイルとひとことを送るか、メールに返信します。回答のたびに調査担当が読み直し、まだ足りないものを GembaOS が Playbook の回数上限まで依頼します。それ以外の書類は査定担当が依頼できます。稟議書は書類が揃ってから一度だけ起票されます。

書類がいつまでも届かないときは?

期限が過ぎたとき、または回数を使い切っても必要書類が足りないときの扱いを、Playbook は一つの設定で定めます。

設定起きること
担当者が判断記録され、査定担当の案件一覧に出て、担当者が判断する
回付指定の役割(保険金部長など)の案件一覧に移る
書類不備で終了書類が届かなかったことを申請者に伝える。支払可否の判断ではなく、改めて請求できる
不支払不支払の稟議が起票され、経路の担当者に回る。人が押印するか、却下すれば案件は査定担当に戻る

期限切れだけで不支払が実行されることはありません。規程のルールに不支払を決裁させることもできますが、その場合 gemba config check が「人の押印なしに不支払になりうる」と警告します。

これまでGembaOS では
書類を読む査定担当が全ページを読み、金額を書き写す調査担当が読み、値ごとに記録との一致・相違が付く
少額の請求大口と同じ列に並ぶ申請者の確認後、御社の上限内で指摘がなければ即時処理
書類の不備担当者の手帳のリマインダー。異動や休暇で途切れる必要書類は GembaOS が依頼して一度督促し、届かなければ Playbook の設定どおりに扱う
申請者の申告査定メモに書き写される本人の言葉と書類をそのまま示し、本人が確認。ハッシュで固定
医療審査・法務の意見案件ファイルのコメント選択肢から選ぶ所見として押印チェーンに入る
部長の確認案件ファイルを最初から読む前回閲覧以降の変化と、残る決定ひとつ
準備金の計上承認メールの後に手入力請求を読み直したうえで、ワンタイム許可証のもとで一回だけ実行

どう進むのか?

手順誰が記録されるもの
1. 受付申請者が請求番号を添えて申告。ランタイムが申告と書類を記録し作業票を発行申告、書類、対象の請求(本人の請求に限る)
2. 要旨調査担当が読み、GembaOS が値を記録と照合要旨、値ごとの一致・相違、フラグ
3. 補正必要書類のうちファイルにない種類を GembaOS が依頼、申請者が提出、調査担当が読み直す各回の種類・期限・督促、届いたものと日時、新しい要旨と数え直し
4. 確認申請者が記録内容を確認、または誤りを伝える申込内容の確認、または元の記録の横に訂正
5. 即時処理確認を受けて GembaOS が対象(ルールで決裁)か対象外か。対象外なら誰が決裁し、なぜか
6. 査定へ進む書類が揃ったら査定担当が要旨を先頭にした稟議書一枚。請求の現状と、事故からの日数・補正の回数・書類の数
7. 押印査定担当、次に保険金部長。それぞれ所見を付けて所見と理由の入った押印チェーン
8. 実行ランタイムが許可証のもとで承認者が見た内容と照合してから、準備金を一回だけ計上

「AI が不払いを提案した」ときに、誰が押印するのか?

この査定窓口では、モデルは不払いを提案しません。一覧の種類で論点を挙げるだけで、決めるのは人です。経路上の人が、Playbook の定める所見を付けて押印します。査定担当は「担保範囲内/担保範囲外/要調査」、医療審査は「治療は必要/治療は不要/診療記録が不十分」、法務は「免責条項に該当/該当せず/解釈に疑義あり」です。

所見は次の手順も決めます。「要調査」なら医療審査が査定担当のすぐ後に押印し、「診療記録が不十分」なら稟議が差し戻されて申請者に診療記録が求められます。所見を選ぶのは人、次の手順を決めるのは Playbook です。

保険金の支払査定は、生活や権利に直結する判断です。AI の役割を不正の可能性の提示にとどめ、判断と証拠評価は人が責任を持つ、という考え方が業界でも示されています。GembaOS の記録には、誰が、どの事実を見て、どの所見で決めたか、そしてモデルが何を読んだかが残ります。

実際の画面

受付時の GembaOS 案件パネル。要旨は写真を写真として分類し、必要書類の診療記録と領収書が不足、第 1 回の依頼は規程によるもの
受付時の GembaOS 案件パネル。要旨は写真を写真として分類し、必要書類の診療記録と領収書が不足、第 1 回の依頼は規程によるもの

GembaOS の作業票ページ(スマートフォン)。申込内容の確認と、補正依頼「診療記録・領収書」
GembaOS の作業票ページ(スマートフォン)。申込内容の確認と、補正依頼「診療記録・領収書」

書類到着後の GembaOS 案件パネル。要旨は金額と受傷日を記録と「一致」と示し、即時処理の対象外で査定担当と部長が決裁
書類到着後の GembaOS 案件パネル。要旨は金額と受傷日を記録と「一致」と示し、即時処理の対象外で査定担当と部長が決裁

調査要旨から始まる準備金計上の稟議書。書類と記録の照合、添付、承認後に起きること
調査要旨から始まる準備金計上の稟議書。書類と記録の照合、添付、承認後に起きること

査定担当の押印後に保険金部長が開いた稟議書。前回閲覧以降の変化として、所見「担保範囲内」の押印が一つ追加
査定担当の押印後に保険金部長が開いた稟議書。前回閲覧以降の変化として、所見「担保範囲内」の押印が一つ追加

実行後の作業票の時系列。二つの押印、実行前の請求の再読取、許可証のもとでの計上と読み戻し、正式回答
実行後の作業票の時系列。二つの押印、実行前の請求の再読取、許可証のもとでの計上と読み戻し、正式回答

同じ窓口の少額請求を二件。要旨が止めたものと、即時処理で終わったものです。

少額請求の GembaOS 案件パネル。書類と記録の相違で即時処理の対象外、要旨は領収書の合計を「相違」と示す
少額請求の GembaOS 案件パネル。書類と記録の相違で即時処理の対象外、要旨は領収書の合計を「相違」と示す

要旨から始まる少額請求の稟議書。領収書 ¥18,000、記録 ¥12,000 に「相違」、領収書を添付
要旨から始まる少額請求の稟議書。領収書 ¥18,000、記録 ¥12,000 に「相違」、領収書を添付

台風の少額請求の作業票の時系列。要旨は記録と一致、即時処理、規程のルールで決裁、準備金の計上と読み戻し
台風の少額請求の作業票の時系列。要旨は記録と一致、即時処理、規程のルールで決裁、準備金の計上と読み戻し

即時処理後の作業票ページ(スマートフォン)。確認済みの申込内容と正式回答
即時処理後の作業票ページ(スマートフォン)。確認済みの申込内容と正式回答

始めるのに必要なもの

関連:購買の例外申請、返金の承認、書類の督促をエージェントに任せるには。

この記事が答える質問

保険金の支払可否を AI エージェントが決めるのですか?

いいえ。調査担当(モデル)は書類を読んで署名する人に要旨を渡すだけで、金額の提案も所見の選択もしません。請求は稟議書で終わり、名前のある担当者が選択肢から選んだ所見を付けて押印します。本人確認済みで指摘のない少額請求に限り、テナントの職務権限表の範囲内で規程のルールが決裁します。

保険金請求で AI は何をするのですか?

申告、すべての添付、回答済みの補正、請求と保険契約の記録を読み、型の決まった要旨を渡します。書類上の金額と日付、経緯、一覧の種類の論点(約款の条項を記録のとおりに引用)、不足書類、相談先です。GembaOS が値を一つずつ請求記録と照合し、「一致」「相違」を付けます。

AI が約款の条項をでっち上げていないと、どう分かりますか?

条文が用紙に載り、引用が条文と照合されるからです。条項を引く論点には、その条文の語句をそのまま添えます。GembaOS は条項番号を保険契約記録の条項と照らし、引用文をその条項の本文と一字ずつ照らします。「条文にない」「引用なし」「契約に記載なし」はリスクフラグです。条文の全文は引用の横に印刷されます。この照合が示すのは語句が条文のものであることまでで、条項が論点を支えるかどうかの判断は押印する人のものです。

不足書類の督促は誰がしますか?

Playbook が定める必要書類は GembaOS が督促します。調査担当がファイルを書類の種類に分け、GembaOS が足りない種類を数えて、期限と一度の督促つきで申請者に依頼します。それ以外の書類は査定担当が依頼できます。書類が届かないときは Playbook の設定どおり、査定担当が判断する、部長に回付する、書類不備で終了する、または不支払を査定担当の押印に諮る、のいずれかになります。

休暇明けの部長は何を見ればよいですか?

前回閲覧以降の変化(待った日数、追加された押印と所見、新しい書類、補正の回数、申請者の確認)と、その下の「残る決定はひとつ」です。押印待ちの役割、その役割への問い、未決の所見が並びます。

最終更新: · GembaOS v0.2