03 / セキュリティと導入
セキュリティと導入形態
GembaOS は、AI エージェントを職務権限規程・稟議・監査のもとで運用するための実行基盤です。ポリシーによる権限判定、パラメータに紐づくワンタイム許可証、人の承認記録を、オンプレミスまたはプライベート VPC 上で提供します。当社が提供するのは設計と検証結果であり、評価は貴社の監査の手に委ねます。
GembaOS はどこで動き、何が社外へ出ますか?
GembaOS は、貴社が管理するインフラ(オンプレミスまたはプライベート VPC)上で、専用のデータディレクトリを持つ単一の Linux バイナリとして動きます。貴社が経路を設定しない限り、何もそのネットワークを出ません。
| 構成要素 | 動く場所 | 社外へ出るもの |
|---|---|---|
| 実行基盤、ポリシーエンジン、業務機能ゲートウェイ | 貴社のサーバー | なし |
| 承認者・運用者向けコンソール | 同じバイナリ。自前の証明書による TLS、または貴社のリバースプロキシ配下 | なし |
| モデル | 自社ホスト、または貴社が選ぶクラウド事業者 | 自社ホスト: なし。クラウド: プレイブックが許すプロンプト内容のみ。下記の上限に従う |
| 業務システム | 貴社ネットワーク内から呼ぶアダプター: REST、ファイル、SQL、相互 TLS 経由のワーカー | 承認された一回の呼び出し |
| チャネル(メール、Teams、Slack、電話、Web ウィジェット) | 貴社の認証情報で設定した接続 | そのチャネルのメッセージ内容 |
「送出上限」は、テナントごと・プレイブックごとに「どの区分のモデル提供者(自社ホスト、プライベートクラウド、公開 SaaS)に、どの機密区分のデータを渡してよいか」を宣言するものです。プレイブックは、エージェントの役割にかかわらず、上限を超えるデータを送れません。自社ホストモデルと SaaS モデルを、部署ではなくデータの機密度で使い分けるための仕組みです。
エージェントは認証情報を持たずに、どうやって操作するのですか?
GembaOS は業務システムの認証情報を業務機能ゲートウェイに置き、いかなるプロンプトにも渡しません。エージェントが見るのは業務機能の名前と引数のスキーマだけで、すべての呼び出しは同じ順序でゲートウェイを通ります。
| 段階 | 誰が | 何を照合するか |
|---|---|---|
| 1. 起案 | 社員の名義で動くエージェント | 業務機能が存在し、引数がスキーマに合うこと |
| 2. ポリシー | ガバナンスカーネル | 職務権限規程、経路、前提条件、作業票のリスク印 |
| 3. 押印 | 委ねられた確認はエージェント、経路が求める段階はパスキーを持つ人 | 表示された稟議書そのもの: 事実、引数、理由 |
| 4. 許可証 | ガバナンスカーネル | 承認済み引数のハッシュに紐づく一回限りのワンタイム許可証 |
| 5. 実行 | 実行基盤とアダプター | 前提条件を読み直し、承認者が見た内容と照合する。変わっていれば実行せず差し戻す |
| 6. 記録 | ガバナンスカーネル | 作業票上のハッシュチェーン事象 |
エージェントは何を閲覧できますか?データ参照権限とナレッジベースの境界制御
参照も書き込みと同様に、業務機能ゲートウェイによって強制的に統制されます。GembaOS は「データベースの全レコードや社内文書をモデルにそのまま渡し、プロンプトの指示で機密を守らせる」といった楽観的なアプローチをとらず、データがモデルのコンテキストに入る前に物理的な境界を適用します。
- 項目レベルのマスキングと除外(Field-Level Pruning):権限のない項目(クレジットカード番号、個人識別番号、給与情報、社内評価など)はゲートウェイで物理的に切り落とされ、プロンプトには流入しません。エージェントが受け取るのは、その役割のスキーマで宣言された許可項目のみです。
- 他顧客データの参照遮断:データベース参照は、あらかじめ定義されたパラメータ化クエリや指定項目の読み取り専用ビューに限定され、自由な SQL の組み立ては拒否されます。検索条件は作業票に紐づく顧客・テナント ID に厳密にバインドされ、他の顧客のレコードを横断的に探索・取得することはできません。
- 探針(プロービング)を防ぐ文書検索境界:社内文書を検索する際、エージェントは承認・公開済みの正式版のみを検索できます。未承認の下書きや権限外のフォルダは最初から対象外です。閲覧権限のない機密文書へのアクセスには、実在しない場合と全く同じ「文書が存在しません(Not Found)」を返し、モデルが推測を繰り返して機密の存在を探る行為を防ぎます。
- 代行権限の上限(On-Behalf-Of):エージェントが社員の名義で動く場合、有効な参照権限は「エージェントの役割権限」と「ログインしている社員本人の閲覧権限」の積集合(両方に認められた範囲)に制限されます。社員本人が見られない機密データは、エージェントも代行して取得できません。
- 拒否された参照の記録:権限外の参照試行はすべてゲートウェイで遮断され、監査証跡として記録されます。不審な試行や異常な読み取りエラーが発生した場合、作業票にリスク印が付与され、管理者に通知されます。
承認済みの操作は、改ざんからどう守られますか?
GembaOS はすべてのワンタイム許可証を承認済み引数のハッシュ(argsHash)に紐づけ、一度だけ発行し、期限を付けます。異なる引数の呼び出しは許可証と一致せず拒否されます。承認済みの呼び出しを実行すると許可証は消費され、二度目も拒否されます。実行の前にガバナンスカーネルは、プレイブックが指定する前提条件を読み直し、稟議書上の事実と照合します。押印の後に状況が変わっていれば、実行せずに起案者へ差し戻します。押印後に変わった注文は、新しい起案です。
プロンプトインジェクションをどう扱いますか?
GembaOS は外部の内容をデータとして扱い、権限の根拠にはしません。メール、チャット、ログ行、文書、画像に埋め込まれた指示文が権限を与えることはありません。操作を許可する判断は、モデルの外側にあるポリシーが行うからです。
- 指示文の混入が疑われる内容は、作業票に不審な入力として印が付きます。印の付いた操作は、エージェントの提案にかかわらず人へ回ります。
- プレイブックに書かれたエスカレーション条件は、モデルの判断に委ねず、ガバナンスカーネルが強制します。
- 添付や画像もデータです。画像がモデルに届くのはプレイブックが許す場合だけで、それについてのモデルの出力もデータのままです。
- 記録済みのレッドチーム事例(プロンプトインジェクション、パラメータ改ざん、権限昇格、認証情報の持ち出し)は、変更のたびにテストとして再生されます。貴社のセキュリティ担当と一緒に一つずつ確認します。
人はどのように押印し、どのように本人確認されますか?
GembaOS は人の押印を、押印する本人が持つパスキー(WebAuthn)に結び付けます。高リスクの経路にはハードウェアキーを必須にできます。社員は貴社の ID プロバイダーに OIDC でサインインし、社員名簿は貴社のエクスポートから取り込みます。名簿を勝手に作ることはありません。このサイトのデモ画面はデモ用のパスキーで押印しています。本番では貴社の社員自身のパスキーを使います。代理人、上申先、稟議を引き取った上長も、それぞれ自分のパスキーで押印し、押印チェーンには誰の代理かが残ります。
監査記録には何が残り、検証できますか?
GembaOS は作業票のすべての事象を、順序どおりにハッシュチェーンで記録します。エージェントの手番、ポリシー判定、業務機能の呼び出し、押印、許可証、実行。ポリシー再判定は記録済みの判定を現行ポリシーで再実行し、同じ経路と規則チェーンを導きます。監査再生の画面がそれを示します。顧客が受け取る正式回答は、社内の稟議記録とは分離して保持されます。マルチテナント構成では、テナントごとに実行基盤とストレージが分かれます。
監査で使われる基準に、どの統制が対応しますか?
GembaOS の仕組みは、監査人がすでに使っている統制項目に対応付けられます。監査人の評価を置き換えるものではありません。
| 監査で問われる統制 | GembaOS の仕組み |
|---|---|
| 最小権限、必要時のみのアクセス | 操作ごとの一回限りのワンタイム許可証。エージェントに常設の認証情報を持たせない |
| 職務分掌、二人承認 | 経路が人に留保する段階を含む押印チェーン。本人権限の範囲内の代理実行 |
| 権限の委任、不在時の代理、退職者 | 回付・移送・上申・引き取り(いずれも理由を記録し、必要な押印を減らさない)。社員名簿から取り込んだ組織図に基づく代理規則。退職・異動時の権限の引き継ぎ |
| 変更管理(CAB) | サンドボックスで起案した変更セットを、承認を通してのみ適用 |
| ログの完全性と証跡 | ハッシュチェーン事象(改変は連鎖の検証で分かる)、パスキーに結び付いた押印、記録済みの判定のポリシーによる再判定。否認防止には、貴社の WORM 媒体と証跡の保管の仕組みもあわせて必要です |
| データの所在(FISC 安全対策基準、個人情報保護法の安全管理措置) | 自社インフラ上の単一バイナリ。プレイブックとテナントごとの送出上限 |
| モデルリスク管理 | モデル変更が本番に届く前のシャドー再実行とゴールデンテスト |
| 人間介入・承認プロセス、指示とデータの分離(IPA 手引書 2026 年 7 月、H-1・T-2) | 人の承認が必要な段階を、業務リスクに基づく経路とエスカレーション条件として定義。外部の内容とモデル出力はデータとして扱い、権限の根拠にしない |
個人情報保護法上、クラウドモデルへの送信は委託先への提供に当たり得ます。送出上限とプレイブックの項目マスキングは、その範囲を貴社が決めるための道具です。
貴社のセキュリティ担当と、何を確認しますか?
- 導入構成のアーキテクチャ確認: ネットワーク上の位置、TLS またはプロキシ、ID プロバイダー、アダプター。
- 脅威モデルとレッドチーム事例。実行基盤に対してその場で再生します。
- 先行導入の最初の 2 週間を経た、貴社業務のゴールデンテスト。
- 上の表を、貴社の連携先とモデルごとに埋めたデータフロー表。
- 導入チェックリスト: サービス登録、TLS、リバースプロキシ、データディレクトリのバックアップ。
最終更新: · GembaOS v0.2