解説記事
一度やってみせると、責任者のいる規則になる
仕事を文章に起こすより、やってみせたいと考える業務責任者、規則の確認を求められる管理職、そして記録ツールが何を見て何を残すのかを知りたい情報セキュリティ・監査の方に向けて書いています。
GembaOS は、AI エージェントを職務権限規程・稟議・監査のもとで運用するための実行基盤です。ポリシーによる権限判定、パラメータに紐づくワンタイム許可証、人の承認記録を、オンプレミスまたはプライベート VPC 上で提供します。
仕事が実際にどう進むかは、多くの場合、それをしている人の頭の中にあります。規則として書き出すには、業務と設定の両方が分かる人と、書く時間が要ります。規則を自分で書く方法、組織設計アシスタントに言葉で説明する方法のほかに、GembaOS には三つ目の入口があります。担当者がいつもどおりに仕事を一度やってみせると、見たものを、責任者のいる規則に整える手伝いを GembaOS がします。
仕事を観察して流れを起こすこと自体は、珍しくありません。GembaOS が作ったのは、記録のあとの部分です。この記事では、それを GembaOS に付属する参照用の受注画面でたどります。この画面は会社の顧客管理と基幹システムの役を務め、受注の検索、受注の詳細、支払いの照会、返金の例外申請とその承認、返金の入力があります。
1. 記録してよい範囲は、会社が宣言する
担当者のページで「この作業を教える」を開くと、実演記録ができます。担当者は作業の名前(たとえば「返金例外の処理」)を付け、会社が設定で宣言したアプリケーションの一覧から、記録するものを選びます。自分で足すことはできず、宣言がなければ記録するものもありません。値を一切残さない項目を、会社が宣言しておくこともできます。
そのうえで GembaOS は、記録用コードを発行します。コードは一回の記録にだけ使え、二時間で失効し、もう一度表示することはできません。実演記録は何も実行しません。承認も、許可証も、システムの呼び出しもありません。
2. いつもどおりに仕事をする
担当者は、ブラウザの記録ツールにコードと GembaOS のアドレスを入れ、いつもどおり仕事をします。記録ツールが残すのは、宣言されたアプリケーションの画面の上だけで、開いた画面、ラベルとともに表示された内容、使った部品、確定した値です。パスワード欄の値、画面がカード情報や一回限りの確認コードと示している欄、Cookie、ブラウザに保存されたデータ、通信の中身、クリップボードは残しません。クリック、入力、画面遷移、送信をするコードを持たないので、アプリケーションの中で何かを実行することはできません。
記録できないもの、してはいけないものは、推測で埋めずに印付きの空白になります。別のサイトにいた区間、一時停止、名前の読み取れない部品、別の場所から埋め込まれた画面の一部です。担当者が止めると、すべての手順が表示されます。送るべきでないものを削除でき、削除したこと自体も空白として残ります。そのうえで、送るか破棄するかを決めます。それまで、ブラウザの外には何も出ません。
届いた記録を、GembaOS は記録ツールの申告のまま信用しません。会社の宣言と改めて照合し、ほかのアドレスの手順を落とし、パスワード欄の値を取り除きます。残ったものは、ハッシュ付きの観察、つまり画面に表示されたことの記録として保管します。「送信済み」と表示された画面は、入金済みではなく、記録にもそう書かれます。
記録の中身は、作業票の記録の外に置きます。作業票の記録に残るのは、記録の出どころ、時刻、手順の数、ハッシュです。担当者は送ったあとでも記録を取り下げられます。そこから作った版も一緒に消え、確認済みの規則は残ります。会社は保管日数を決めておくことができ、決めなければ、取り下げるまで保管します。
3. アシスタントが理解したこと
担当者のアシスタントは記録をデータとして読み、理解した業務の流れを出します。業務の手順(それぞれ記録された手順に根拠があります)、まだ分からないことを添えた規則の候補、そして最大三つの質問です。質問は、誤った支払いにつながるもの、誰が決めるのか、の順です。GembaOS は、この提案を記録に照らして抑えます。記録に根拠のないものは捨て、別のシステムへ書き込む手順はすべて人の手に残すと明記し、画面の数字は GembaOS が数え、規則が「説明あり」になるのは担当者自身の回答を引用したときだけです。「分かりません」「一度きりの例外です」「上司に聞いてください」も回答です。
2026 年 9 月 30 日に、実際のモデル(DeepSeek)で、返金の例外一件の記録を一度だけ読ませました。アシスタントが返したのは、記録された手順に根拠のある九つの業務の手順で、返金の入力は人の手に残すと印が付いていました。返金の画面を「受け付けた」であって「精算した」ではないと読み、申請者と承認者が同じ人であることにも気づきました。規則の候補は七つで、それぞれ境界と通貨について分からないことが添えられ、質問は三つでした。一つ答えると、二つの規則が「説明あり」になり、アシスタントは、その回答が聞かれたことに答えていない、とも自分で指摘しました。
同じ仕事の記録が複数あれば、違いは並べて残ります。参照用の画面で三回記録した場合(一般会員の一部返金で例外申請と CS 責任者の承認があるもの、金カード会員の直接の全額返金、争いのある注文を返金しなかったもの)、アシスタントは、前の二つは扱いが違うこと、会員の等級と金額のどちらで決まるかは記録からは分からないことを述べ、最初の質問はまさにそれでした。回答のあとには、新しい未確認事項として、「5 万円は注文金額か、返金額か」を加えました。
モデルがつながっていない、またはその画面のデータを扱うことが認められていないときは、画面ごとに手順を区切る代替処理が働き、規則は出さず、そのことを示します。担当者が手順と規則を自分で書けば、その後はすべて同じです。
4. 責任者が、その文言のとおりに確認する
規則の候補は、確認されるまで候補のままです。担当者が確認を依頼すると、答えるのは、会社がそのアプリケーションについて指名した役職の人(参照用の画面では CS 責任者)で、指名がなければ実演した人の直属の上司です。規則ごとに、確認するか見送るかを、メモを添えて決めます。自分の実演から作られた規則を、自分で確認することはできません。
確認は、規則の文言そのままに結び付きます。担当者があとで規則の言い回しを直すと、新しい文言には確認がありません。確認は確認した人の名前で残る記録で、それだけで何かを実行させる権限にはなりません。
5. 確認済みの規則から、公開へ
組織設計アシスタントは、ある実演記録の確認済みの規則を、確認の時点でまだ分からなかったこと、記録に残る未解決のこと(答えていない質問、採用されなかった規則、記録が届いていない区間)とともに受け取り、下書きの根拠として引用できます。承認する人には、「責任者が実演記録で確認した規則」と、確認した人の名前と役職、残された未解決のことが示されます。
アシスタントは、実演の各手順の行き先も示します。会社にある操作、押印、確認済みの規則、まだつながっていないシステム、あるいは人です。GembaOS が受け入れるのは、合う行き先だけです。読む手順は、読む操作にしか置けません。システムを変更する手順は、システムを変更し、承認経路を通る操作にしか置けないので、実演から生まれた書き込みが押印なしに動くことはありません。判断の手順が規則に置けるのは、同じ記録で確認された規則が下書きに入っているときだけです。ほかはすべて人の手に残り、公開の画面がその理由を示します。
公開の画面は、変更が動かす経路ごとに、前と後を設定から描いて並べます。変更される業務の宣言済みの事例を、下書きのファイルで、本番のシステムに届かない環境で試行することもできます(画面では「試行」と呼びます)。そこではモデルは台本どおりに答える代替で、外部のシステムはテストデータで答え、テストデータのない接続は、届かないものとして数えられます。さらに、下書きを起案した人でも実演した人でもない二人目から、保留事例を受け取ります。候補の規則と現行の規則で並べて判定し、規則の条件が分ける場合(上限以下、ちょうど上限、上限超え、注意の印が付いたかどうか)のうち、どれに事例が届いたかを表にします。事例を出したあとでファイルが変われば、その事例は「見ていない事例」には数えません。
承認は二人目の人が行い、公開は GembaOS が行います。そのあいだに責任者が確認を取り消せば、公開は止まり、承認も公開もできません。
GembaOS が確かめることと、確かめないこと
| 誰が行うか | |
|---|---|
| どのアプリケーションを記録してよいか、どの項目を残さないか | 会社が、設定で宣言する |
| 宣言されたアプリケーションだけを記録し、パスワードは残さず、操作はしないこと | 記録ツール。届いたあと GembaOS が改めて照合する |
| 記録を読み、手順・規則の候補・質問を出す | モデル(つながっている場合) |
| 手順や規則が記録に根拠を持つこと、書き込みはそのシステムがつながるまで人の手に残ること、「説明あり」は本人が言ったという意味であること | GembaOS |
| 規則が正しく、会社のものであるか | その規則に責任を持つ役職の人が、確認することで |
| 実演の手順の行き先、合わない行き先の却下 | GembaOS |
| 承認の時点で、実演から作った規則がまだ有効か | GembaOS。責任者が取り消していれば、公開を止める |
| テストデータでの試行、保留事例、経路の前と後 | GembaOS |
| 承認と公開 | 二人目の人、そのあと GembaOS |
いまできないこと
- ブラウザのアプリケーションだけです。 記録ツールは試作段階のブラウザ拡張機能です。デスクトップアプリケーションは記録できません。自社で用意した二つの試験用アプリで読み取りを試しましたが、実際の業務アプリではまだ試していません。
- クリックの再生はしません。 実演した手順をエージェントに実行させることは範囲に入っていません。書き込みは、そのシステムが統制対象の操作としてつながるまで、人が行います。
- 一回の実演は会社の規則ではありません。 担当者の経験です。ある人がシステムで何をできたかが、別の人への許可になることはなく、一度見た抜け道が通常のやり方として学習されることもありません。
- 記録は会社自身のストレージに、ファイル権限を絞って保管されます。会社が自分で持つ鍵で、これらのファイルを暗号化して保管することもできます。鍵はデータとは別に置き、設定したときだけ有効で、対象はこれらのファイルだけです。ほかのデータの保存時の暗号化は、会社のディスク暗号化に依存します。
- 試行で確かめるのは GembaOS の判定であって、モデルの読み取りではありません。 保留事例が覆うのは規則に書かれた条件で、通貨、返金済みの履歴、二重の送信は、宣言済みの事例で確かめます。
- すでにモデルの提供元へ送られた内容は、その提供元の保管条件に従います。
どう試験しているか
モデルの要らない部分は、自動試験で確かめています。記録から GembaOS が何を残し何を落とすか、誰が確認できるか、公開が何を拒むか、取り下げで何が消えるかです。台本どおりの通し試験では、実物の拡張機能をブラウザに読み込み、参照用の画面で返金の例外を一件こなします。途中で別のサイトに出て、パスワードも一度入力し、記録のどこにもパスワードがないことを確かめます。モデルを使う段階は、上に書いたとおり実際のモデルで手を動かして確かめたもので、測定した精度は主張しません。
この記事が答える質問
GembaOS は私たちのアプリケーションのクリックを覚えて、代わりに動かすのですか?
いいえ。担当者のクリックを再生する仕組みはありません。実演は、担当者が直せる業務の流れと、責任者が確認できる規則の候補になります。別のシステムへ書き込む手順は、そのシステムが統制対象の操作としてつながるまで人が行い、つながったあとも、承認経路の押印がそろってからしか動きません。実演から作った手順をエージェントに実行させることは、まだ範囲に入っていません。
どのアプリケーションの、どの画面を記録できますか?
いまはブラウザで動くアプリケーションのうち、会社が実演用に宣言したものだけです。担当者が自分で足すことはできません。記録ツールは試作段階のブラウザ拡張機能です。デスクトップアプリケーションはまだ記録できません。自社で用意した二つの試験用アプリで読み取りを試しましたが、主張できるのはそこまでです。
実演した本人が、その規則を確認することはできますか?
できません。確認するのは、会社がそのアプリケーションについて指名した役職の人で、指名がなければ実演した人の直属の上司です。その記録で実演した人は誰も、そこから作られた規則を確認できず、その規則に基づく公開の保留事例を出すこともできません。確認は文言そのままに対して有効です。あとで責任者が確認を取り消せば、その規則に基づく公開は、承認も公開もできません。
モデルには何が見えますか?
モデルがつながっている場合、担当者のアシスタントは記録をデータとして読みます。会社のデータの上限の範囲内で、その画面のデータを扱うことが認められたモデルだけです。複数人で実演したときは「一人目、二人目」と伝え、誰かは伝えません。モデルがつながっていない、または認められていないときは、画面ごとに手順を区切る代替処理がそのことを示し、手順と規則は担当者が自分で書きます。すでにモデルの提供元へ送られた内容は、その提供元の保管条件に従います。
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最終更新: · GembaOS v0.2